M&Aのトラブル事例6パターン!売却・買収側の失敗を防ぐ対策

M&Aを検討しているけれど、トラブルが多そうで不安だな」と感じていませんか?

この記事では、M&Aでよく起こりがちなトラブルの具体例と、その解決策をわかりやすくお伝えします。

 

売却側では「会社の価値を正確に伝えられない」、買収側では「企業文化の違いを軽視してしまう」など、

意外なポイントが壁になることも。知らないと損をしてしまうケースも少なくありません。

 

本記事では、売却側・買収側それぞれの視点から、実践的な対策をまとめました。

これを読めば、「こんなはずじゃなかった」を未然に防ぐヒントが見つかるはずです。

M&Aを成功に導くための準備、一緒に始めてみませんか?

 

M&Aのよくあるトラブル6つのパターン

ここから、M&Aにおける代表的なトラブルについて解説していきます。

M&Aでよく見られるトラブルには、次の6つが挙げられます。

 

【M&Aのトラブルパターン】

  1. デューデリジェンスの不備によるトラブル
  2. シナジー効果の過信によるトラブル
  3. 市場環境の変化に対応できなかったトラブル
  4. 企業文化や経営方針の不一致によるトラブル
  5. 情報管理の失敗が引き起こしたトラブル
  6. 仲介会社の不備によるトラブル

それぞれのトラブルについて順に見ていきましょう。

デューデリジェンスの不備によるトラブル

  • LIXILによるグローエ買収のM&A事例
M&Aの実施時期 2014年1月
M&Aの目的 ・海外市場での事業拡大
・水回り製品の品揃え強化
・欧州市場での地位確立
・グローバルブランドの獲得
M&Aの手段 ・グローエの株式87.5%を取得
・日本政策投資銀行との共同買収
・残り12.5%の株式も後日取得
M&Aの買取価格 総額約4,400億円

 

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • 不十分なデューデリジェンス:グローエの子会社ジョウユウ(中国)の財務状況を十分に調査できていなかった。
  • 子会社管理の甘さ:買収後もジョウユウの経営実態を把握できていなかった。
  • 文化の違いへの対応不足:中国企業特有の経営慣行や会計処理の違いを理解していなかった。

 

M&A後の影響

  • 巨額損失の発生:ジョウユウの破綻により、約600億円の損失を計上。
  • 財務状況の悪化:予期せぬ損失により、LIXILの財務体質が悪化。
  • 経営陣の混乱:責任問題により、トップマネジメントの交代や内部対立が発生。

 

このM&Aは、海外企業を買収する際にリスク管理がどれほど重要かを示す事例となりました。

特に、子会社の財務状況や経営の実態を把握すること、異なる文化への対応など、事前調査の重要性が明らかになりました。

シナジー効果の過信によるトラブル

  • セブン&アイ・ホールディングスによるニッセン買収の事例
M&Aの実施時期 2013年12月
M&Aの目的 ・オムニチャネル戦略の強化
・ネット事業の拡大
・カタログ通販とリアル店舗の融合
・新たな顧客層の獲得
M&Aの手段 ・セブン&アイ・ネットメディアによる株式公開買付(TOB)
・ニッセン株式の50.1%を取得し、子会社化
・その後、完全子会社化を実施
M&Aの買取価格 約126億円(1株410円)

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • シナジー効果の過信:カタログ通販とリアル店舗の融合による相乗効果を過大評価した。
  • 市場環境の変化への対応不足:ECの急速な成長に対し、カタログ通販の衰退を見誤った。
  • 経営統合の難しさ:異なる企業文化や事業モデルの統合に苦戦した。

 

M&A後の影響

  • 巨額損失の発生:ニッセンの業績悪化により、セブン&アイは多額の減損損失を計上。
  • ブランドイメージへの影響:失敗したM&Aにより、セブン&アイの経営判断への信頼が低下。
  • 経営資源の分散:ニッセン再建に注力することで、他の重要な事業領域への投資が遅れた。

 

このM&Aは、シナジー効果を過信することが、いかにリスクを伴うかを示す事例です。

カタログ通販とリアル店舗の融合という構想は、急速に変化する小売業界の現実に対応しきれませんでした。

その結果、セブン&アイは2023年にニッセンを売却し、EC事業の戦略を見直さざるを得なくなりました。

 

市場環境の変化に対応できなかったトラブル

  • マイクロソフトによるノキア買収の事例
M&Aの実施時期 2014年4月
M&Aの目的 ・スマートフォン市場でのシェア拡大
・Windows Phoneの普及促進
・ハードウェア事業の強化
・モバイル事業での競争力向上
M&Aの手段 ・ノキアの携帯電話端末事業とサービス事業を買収
・ノキアの特許と地図サービスのライセンス取得
・ノキアの従業員約32,000人を引き継ぐ
M&Aの買取価格 総額約54億4000万ユーロ(約7100億円)

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • 市場環境の急激な変化:AndroidとiOSの急速な普及に対応できなかった。
  • Windows Phoneの不振:ユーザーや開発者の支持を十分に得られなかった。
  • 戦略の不一致:ハードウェア事業への参入が遅すぎた。

M&A後の影響

  • 巨額損失の発生:買収後わずか1年で73億ドルの減損損失を計上。
  • 人員削減:ノキアから引き継いだ、従業員の大規模なリストラを実施。
  • 市場シェアの低迷:Windows Phoneの市場シェアが、期待通りに伸びなかった。

このM&Aは、急速に変化するスマートフォン市場での戦略判断が、いかに難しいかを示す事例です。

マイクロソフトは、最終的に2016年にノキアのフィーチャーフォン事業を売却し、2017年にはWindows Phone事業からの撤退を発表しました。

この経験を経て、マイクロソフトはクラウドサービスやAIといった、自社の強みを活かせる分野に注力することになりました。

 

企業文化や経営方針の不一致によるトラブル

  • ウォルマートによる西友買収のM&A事例
M&Aの実施時期 2002年4月(資本提携開始)
2005年(子会社化)
2008年(完全子会社化)
M&Aの目的 ・日本市場への本格参入
・西友の経営再建
・ウォルマート流ビジネスモデルの日本展開
・アジア市場での足がかりの確保
M&Aの手段 ・段階的な資本提携
・西友株式の取得による子会社化
・株式公開買付け(TOB)による完全子会社化
M&Aの買取価格 総額約2,470億円(段階的な投資の合計)

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • 企業文化の違い:ウォルマートの米国式経営手法が、日本市場に適合しなかった。
  • 経営方針の不一致:コスト削減重視のウォルマート流が、日本の顧客サービス重視の文化と衝突した。
  • 段階的投資の失敗:初期の投資で成果が出ないまま、追加投資を続けた。

M&A後の影響

  • 業績改善の遅れ:西友の赤字体質が改善されず、長期にわたり業績不振が続いた。
  • ブランドイメージの低下:低価格戦略により、西友のブランド価値が低下した。
  • 人材流出:企業文化の違いにより、優秀な人材が離職した。

 

このM&Aは、グローバル企業が異なる文化圏で事業を展開する「難しさ」を示す事例です。

ウォルマートの成功モデルをそのまま日本市場に適用しようとしましたが、日本の消費者のニーズや市場の特性に合わなかったことが失敗の要因となりました。

その結果、2020年にウォルマートは西友株式の大部分を売却し、日本市場からの実質的な撤退を決めるに至りました。

情報管理の失敗が引き起こしたトラブル

  • 楽天によるTBSへのTOB提案に関する事例
M&Aの実施時期 2005年10月
M&Aの目的 ・放送とインターネットの融合
・メディア複合企業の創出
・TBSの影響力とブランド力の活用
・楽天の顧客基盤とネットビジネスの強化
M&Aの手段 ・TBS株式の大量取得(筆頭株主化)
・共同持株会社方式による経営統合の提案
・業務提携協議の開始
M&Aの買取価格 当初の株式取得額:約880億円(15.46%取得時)
TOB価格:未実施のため不明

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • 情報管理の失敗:事前の情報漏洩により、TBS側の警戒心を高めてしまった。
  • 突然の提案:TBSとの十分な事前協議なしに統合提案を行い、反発を招いた。
  • 敵対的買収のイメージ:株式の大量取得が敵対的買収と受け取られ、TBS側の反発を招いた。

 

M&A後の影響

  • 株価の下落:買収騒動により、TBSの株価が乱高下した。
  • ブランドイメージの低下:両社とも、強引なM&A手法によりイメージダウンを招いた。
  • 財務負担:楽天は高値で取得したTBS株式により、多額の評価損を抱えることになった。

 

この事例は、M&Aにおける情報管理の重要性と、相手企業との十分な対話がいかに欠かせないかを示しています。

突然の提案や一方的な株式取得は、相手企業の反発を招き、統合がスムーズに進まなくなる恐れがあります。

異なる企業文化を持つ企業同士のM&Aでは、慎重なアプローチと相互理解が求められることがわかります。

 

仲介会社の不備によるトラブル

  • 日本製造と日本M&Aセンターの事案について
M&Aの実施時期 2020年
M&Aの目的 ・日本製造の事業売却
・適切な買い手の選定
・円滑な事業承継の実現
・従業員の雇用継続
M&Aの手段 ・日本M&Aセンターによる仲介
・買い手企業の選定と交渉
・契約書の作成と締結支援
M&Aの買取価格 非公開(具体的な金額は明らかにされていない)

このM&Aがトラブルとなった要因として、以下の点が挙げられます:

  • 仲介会社の不適切な行為:日本M&Aセンターによる契約書の偽造や不正な売上計上。
  • デューデリジェンスの不備:買い手企業の財務状況や、経営能力の調査が十分に行われなかった可能性。
  • 情報の非対称性:売り手と買い手の間で、重要な情報が適切に共有されなかった可能性。
  • 仲介会社の利益相反:成約を急ぐあまり、双方の利益よりも自社の利益を優先した可能性。

 

M&A後の影響

  • 信頼関係の崩壊:仲介会社の不正行為により、M&Aに関わる全ての当事者間の信頼関係が損なわれた。
  • 法的リスク:契約書の偽造により、M&Aの有効性自体が問題となる可能性がある。
  • 財務的損失:不適切なM&Aにより、売り手・買い手双方に予期せぬ損失が発生した可能性がある。

 

この事例は、M&Aにおいて仲介会社の重要性と、その信頼性を確保することの大切さを示しています。

仲介会社は単なる橋渡し役にとどまらず、M&Aの成否に直接関わる存在であることが明らかになりました。そのため、今後のM&Aでは、仲介会社の選定や管理に十分な注意が求められるでしょう。

また、売り手と買い手がそれぞれ十分な事前調査(デューデリジェンス)を行い、情報の偏りをなくすことが成功への鍵となることも再確認されました。

 

売却側と買収側のM&A失敗防止策

ここから、M&Aにおける失敗を防ぐための具体的な対策についてご紹介します。

まずは、売却側が取るべき防止策について見ていきましょう。

売却側の対策

  • 条件を明確にし、早い段階で主張する

はじめのポイントは、売却条件を明確にし、早い段階で伝えることです。

たとえば、家族経営のA社が従業員の雇用維持を条件に売却を希望する場合、早めにその意向を買収側に伝えることで、相手は十分な準備や検討を行うことができます。

条件が曖昧なままだと、後から双方の意見が食い違い、交渉が進まないことがあります。売却側が自分の条件を速やかに伝えることが、スムーズなM&Aを実現するためのポイントとなります。

 

  • 人材流出を防ぐため、従業員と早めに協議を行う

続いては、従業員との早めの協議です。

M&Aが決定した際には、できるだけ速やかに従業員に知らせ、今後の待遇や役割について話し合うことで、不安や誤解が軽減され、人材の流出を防ぐことが期待できます。

従業員が安心して働き続けられる環境を整えることは、会社の安定を保ち、M&Aを成功に導くための重要な要素です。

このように、早い段階での協議が、スムーズなM&Aに向けた大切なポイントとなるのです。

 

  • 権限移譲を計画的に進め、親族間のトラブルを防ぐ

もう1つの重要な対策は、権限移譲を計画的に進めることです。

たとえば、家族経営のA社がM&Aを予定している場合、早めに後継者へ業務や権限を引き継いでおくことで、親子間や親族間での意見の食い違いや、役割争いを防ぐことができます。

準備が整っていないままM&Aを進めると、統合後に内部対立が生じ、事業引き継ぎが円滑に進まない可能性があります。

権限移譲を計画的に行うことが、スムーズなM&Aを実現するための大切なポイントです。

 

買収側の対策

次に、買収側が取るべき失敗防止策について見ていきます。

  • 徹底したデューデリジェンスを行う

買収側が取るべき重要な対策は、徹底したデューデリジェンス(事前調査)です。

財務状況、過去の取引実績、在庫や資産などを詳細に調査することで、隠れたリスクや不安定な要素を把握することができます。

 

この確認を怠ると、買収後に予期せぬ問題が発生し、経営に支障をきたす可能性があります。

デューデリジェンスを徹底することが、買収を成功に導く大切な一歩となります。

 

  • 過大評価による財務リスクを回避する

次に挙げるのは、過大評価による財務リスクの防止です。

たとえば、B社が赤字の製造業A社を買収する際、A社の技術や将来の成長性を過大に見積もって高額で買収すると、実際の利益が予測を下回り、財務面の負担が増えるリスクがあります。

適切な価値評価を行い、必要以上に高額な支払いを避けることで、買収後の安定した経営が可能になります。

 

  • 買収後の経営統合(PMI)計画を事前に立案する

最後に挙げる対策は、買収後の経営統合(PMI)計画を事前に立てておくことです。

たとえば、B社がA社を買収する際、A社の従業員が新しい環境にスムーズに適応できるように、組織体制や業務プロセスの調整計画をあらかじめ整えておくとよいでしょう。

 

このような計画がないと、買収後に混乱が生じ、業績の悪化や従業員の離職につながるリスクが生じます。

PMI計画を事前に立てることで、安定した経営の実現につながります。

M&Aのトラブル事例6パターン まとめ

M&Aを成功させるためには、事前準備を万全にし、双方の視点から適切な対策を講じることが重要です。

本記事でご紹介した、M&Aでよく起こりがちなトラブルパターンとその防止策を参考にすれば、売却側と買収側、それぞれの立場で実践的な取り組みが進めやすくなるでしょう。

 

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