近年、美容室経営ではM&Aの事例が増加しており、異業種からの参入も目立っています。
大手サロンチェーンが個人経営の美容室を買収し、地域に根ざしたサービスを展開するケースも見られます。
本記事では、M&Aを検討中の経営者の皆さまに向けて、美容室M&Aの具体的な事例を紹介し、押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく解説します。
最後までお読みいただくことで、美容室M&Aの相場についての理解が深まります。
この記事を通じて、M&A成功への大きな一歩を踏み出すヒントが得られるでしょう。
ぜひ最後までお読みいただき、新たなビジネスチャンスの発見にお役立てください。
美容室業界におけるM&Aの現状
近年、美容室業界におけるM&Aの動向は、ますます注目を集めています。
特に中小企業の経営者にとって、事業承継や経営の多角化を図るための現実的な手段として、M&Aは貴重な選択肢となっています。
厚生労働省の調査によると、美容業の78.2%が「後継者がいない」と回答しており、この状況がM&Aのニーズをさらに高めていると考えられます。
経営の安定を確保するため、今後はM&Aの役割が一層重要になるでしょう。
【後継者の有無別施設数の構成割合(単位:%)】
引用元:厚生労働省 生活衛生関係 営業経営 実態調査報告 美容業
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000501315.pdf
さらに、美容室業界では異業種からの参入も増加しています。
投資ファンドによる大規模な買収が進み、集客力やブランド力を活かした新しいビジネスモデルが展開されつつあります。
異業種参入が続く美容室M&A事例①CLSAによる美容室大手Agu買収
M&Aの実施時期 | 2018年3月 |
M&Aの目的 | 【CLSAキャピタルパートナーズ】Aguの成長力と市場でのポジションを評価し、投資によるリターンを狙う 【Aguグループ】日本一の美容チェーンを目指し、さらなる事業拡大と経営資源の強化を図る |
M&Aの手段 | 株式譲渡による資本提携 |
M&Aの買取価格 | 約100億円 |
このM&Aが成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。
- ビジネスモデルの魅力: Aguは若い女性を主要なターゲットとし、低コストで高品質なサービスを提供することで急成長していた。この強みがCLSAにとって魅力的に映り、投資価値として高く評価された。
- 豊富な資金力とノウハウ: CLSAキャピタルパートナーズはアジア有数の金融機関であり、その豊富な資金力と経営ノウハウを活用することで、Aguのさらなる成長を支援できる体制が整っていた。
- 明確な成長戦略: 両社は明確な成長戦略を共有しており、M&A後もスムーズに事業展開が進められた。
M&A後の効果
M&A後のプラス面として、以下の効果がありました。
- 店舗数の大幅増加: AguグループはCLSAからの支援を受け、店舗数を大幅に増加させた。買収当時271店舗だったものが、2019年10月までに408店舗にまで拡大した。
- 経営基盤の強化: 人材確保や店舗運営の効率化が進み、経営基盤が強化された。CLSAから派遣された取締役による経営支援もあり、新規出店やフランチャイズ展開が加速した。
Aguグループにとって、このM&Aは事業拡大と競争力強化を同時に実現するものとなりました。
異業種参入が続く美容室M&A事例②百五銀行によるHM company・Relato合同会社の株式取得
M&Aの実施時期 | 2020年3月 |
M&Aの目的 | 【百五みらい投資株式会社】事業承継を支援し、成長を加速させる 【HM companyとRelato合同会社】新たな成長戦略を実現し、さらなる事業拡大を目指す |
M&Aの手段 | 株式譲渡による資本提携 |
M&Aの買取価格 | 非公表 |
このM&Aが成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。
- 明確な成長戦略との一致: HM companyとRelatoの経営方針が、百五みらい投資株式会社の描く事業計画と一致した。
- 積極的な関与: 百五みらい投資株式会社は積極的に関心を示し、買収後のビジョンを明確に提示した。
- 誠実な交渉: 美容室の創業社長の誠実な人柄と明確な経営方針が高く評価され、双方の間で強い信頼関係が築かれた。
M&A後の効果
M&A後のプラス面として、以下の効果がありました。
- 事業拡大の加速: 百五みらい投資株式会社からの支援を受け、新規店舗展開と既存店舗の強化が進められた。
- 経営基盤の強化: 経営基盤が強化されたことで、安定した運営が可能となり、新たなビジネスチャンスが生まれた。
異業種参入が続く美容室M&A事例③ミス・パリ・グループによるEuphoriaの買収
M&Aの実施時期 | 2016年7月 |
M&Aの目的 | ・美容総合商社として全方位的な事業拡大を目指す ・エステティックとヘアサロンの技術を融合し、新たな美の提供を実現する |
M&Aの手段 | ・株式譲渡による完全子会社化 ・Euphoriaをパートナーとして迎え入れる形での資本提携 |
M&Aの買取価格 | 非公表 |
このM&Aが成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。
- 共通の理念: ミス・パリ・グループとEuphoriaは、共に「美容を通して人を育てる」という共通の理念を持っていた。
- 技術と教育システムの融合: ミス・パリ・グループのエステティック技術と教育システムをEuphoriaに導入することで、サービスの質が向上した。
- 市場でのポジション強化: Euphoriaが展開する都心の一等地の店舗ネットワークを活用し、新たな顧客層を獲得することが可能となった。
M&A後の効果
M&A後のプラス面として、以下の効果がありました。
- サービスの多様化: エステティック、スパリラクゼーション、ヘアサロンといった多様なサービスを提供できるようになり、総合的な美容ソリューションが実現した。
- 人材育成と技術力向上: ミス・パリ・ビューティ専門学校との連携により、美容師国家資格合格率100%という高い教育成果を活かし、人材育成が強化された。
- ブランド価値の向上: 両社の技術とノウハウが融合したことで、ブランド価値が向上し、市場での競争力も強化された。
美容室M&Aで何が変わる?経営者が知るべき7つのメリット
ここからは、美容室M&Aを通じて経営者が得られる7つのメリットについて、順番にご紹介していきます。
【美容室M&Aのメリット】
- 事業の拡大と強化
- 競争力の向上
- 経営基盤の安定化
- ブランド力の向上
- 新規事業への参入
- 人材の確保
- 後継者問題の解決
それでは、各メリットについて詳しく見ていきましょう。
美容室M&Aのメリット①事業の拡大と強化
美容室M&Aの1つ目のメリットは、事業の拡大と強化です。
M&Aを通じて、既存の店舗数を増やし、事業規模を拡大することが可能になります。例えば、地域で人気の美容室を買収することで、新たな顧客層を取り込み、売上の増加が期待できます。
さらに、M&Aによる拡大は、単に店舗数を増やすだけでなく、運営体制やサービスの質の向上にもつながります。成功している店舗のノウハウや優秀な人材を取り込むことで、自社の経営力を強化することができるのです。
美容室M&Aのメリット②競争力の強化
2つ目のメリットは、競争力の強化です。
M&Aを活用することで、経営者は他社との差別化を図り、競争力を一層高めることができます。
例えば、買収した美容室が持つ独自の技術やサービス、そして顧客基盤を取り込むことで、自社のメニューやサービスの幅を広げ、多様なニーズに応えることが可能です。
これにより、競合他社との差別化が進み、強力な競争優位性を確立できるでしょう。特に規模の小さな美容室では、M&Aを通じて新たなノウハウを獲得し、店舗運営の効率化やコスト削減も期待できます。
大手企業や異業種からの参入が加速する中で、競争力を維持し、さらに強化するために、M&Aは非常に効果的な手段と言えます。
美容室M&Aのメリット③経営基盤の安定化
3つ目のメリットは、経営基盤の安定化です。
M&Aを通じて複数の店舗を運営することで、経営リスクを分散させることが可能です。
例えば、1つの店舗に依存している場合、地域の景気や顧客の動向に大きく左右されるリスクがあります。しかし、M&Aで複数のエリアに展開することで、一店舗の業績不振が全体に与える影響を軽減できるのです。
特に、美容室業界は競争が激化しており、単独で生き残るのが難しい状況にあります。このような環境下で、M&Aを活用して経営基盤を安定させることは、企業の持続的な成長を支える有効な手段となるでしょう。
美容室M&Aのメリット④ブランド力の向上
4つ目のメリットは、ブランド力の向上です。
M&Aによって、すでに確立されたブランドを持つ美容室を買収することで、経営者は自社のブランド力を強化できます。
例えば、買収した店舗が地域で高い評価を得ている場合、その評価を取り込むことで、ブランド価値をさらに高めることが可能です。
これにより、既存の顧客に加え、新しい顧客層にも効果的にアピールできます。
美容業界では、技術力やトレンドに敏感な顧客が多いため、ブランド力の強化は集客力の向上に直結します。信頼性の高いブランドを手に入れることで、競争力も大幅に向上するでしょう。
美容室M&Aのメリット⑤新規事業への参入
5つ目のメリットは、新規事業への参入です。
M&Aを活用することで、既存の美容事業を軸にしながら、関連する新しい事業に展開しやすくなります。
例えば、美容室を買収する際、その店舗が提供している新しいサービスや技術、または異なる業態(エステ、ネイルサロン、ヘアケア商品開発など)を自社に取り込むことで、スムーズに新規事業へ参入することが可能です。
近年は、顧客のニーズは多様化・高度化しています。従来のヘアカットやカラーリングに加え、ヘアケア製品の販売やサロン専用商品の開発など、付加価値の高いサービスを提供することで、収益源を多角化し、事業の成長につながるでしょう。
美容室M&Aのメリット⑥人材の確保
6つ目のメリットは、人材の確保です。
M&Aを通じて既存の美容室を買収することで、優れた技術や接客スキルを持つスタッフを一度に確保することができます。
これは、採用や育成にかかる時間とコストを大幅に削減できるため、経営者にとって大きなメリットです。
美容業界では、優秀なスタイリストや美容師の存在が店舗の成功に直結します。
特に後継者の確保が難しい中小の美容室にとって、M&Aは有能な人材を戦略的に確保し、事業の安定と成長を支える重要な手段となるでしょう。
美容室M&Aのメリット⑦後継者問題の解決
7つ目のメリットは、後継者問題の解決です。
中小美容室の経営者にとって、後継者不在は非常に深刻な課題です。家族や親族内に事業を引き継ぐ人がいない場合、事業継続が難しくなり、経営者は将来への不安を抱えることになります。
しかし、M&Aによって適切な買い手を見つけることで、この問題を解決できます。
買収により、店舗やスタッフ、顧客をそのまま引き継ぐことができるため、長年築いてきたブランドや信頼関係を守りながら事業を継続できるのです。
美容室M&Aの相場は?事業規模や地域での違いを解説
美容室M&Aの相場は、さまざまな要因によって異なりますが、一般的には1店舗あたり数百万円から1千万円台が多いです。
具体的な金額は、美容室の立地や規模、経営状態、在籍する美容師の人数、さらには売買のタイミングによって大きく変動します。
これらの要素が複合的に影響するため、取引金額には幅が生じることが特徴です。
美容室M&Aの相場:事業規模と地域の関係
事業規模の特徴として、小規模な美容室はオーナー経営の場合があり、M&Aという経営的な譲渡ではなく、従業員(オーナー含む)の引継ぎを行わず居抜きで売却されることがあり、その相場は数十万円から300万円程度です。
一方、大規模な美容室やチェーン店では、M&Aによって経営権や従業員を含めた全体の譲渡が行われ、億単位の高額取引になるケースもあります。
地域による違いでは、都市部に位置する美容室は、立地の良さや集客力が評価され、高値で売却されやすいです。反対に、地方の美容室では、集客力や交通アクセスが弱い場合、相場より低い価格で取引されることもあります。
また、美容室M&Aでは、人材やブランド力も重要な評価ポイントです。
収益性や将来性をアピールすることで、有利な条件で成約につながるでしょう。
美容室M&A事例 まとめ
美容室業界のM&A事例から学べるポイントとして、特に後継者問題に直面している場合、M&Aは有効な解決手段となります。
また、異業種からの参入が増えている現状では、競争力を維持するためにも、M&Aの活用を検討するメリットを理解しておくと良いでしょう。
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