IT業界のM&A成功・失敗事例から学ぶ!成長を加速させる4つの理由

IT業界におけるM&Aは、企業にとって大きな転機となる重要な戦略です。

成功すれば、急成長のチャンスを掴むことができますが、失敗すれば大きなリスクを伴います。

では、なぜIT業界では特にM&Aが盛んに行われているのでしょうか?

 

本記事では、IT業界におけるM&Aの成功事例と失敗事例を交えつつ、業界がM&Aに積極的である理由を解説します。

さらに、M&Aが企業の成長をどのように後押しするのかも詳しく紹介します。

 

最後までお読みいただければ、M&Aを通じた企業成長のポイントが明確になるでしょう。

 

IT業界ソフトウェア・サービスのM&A事例

ひと口にIT業界と言っても、その領域は非常に広範です。

本記事では、主にM&Aが多くみられる以下の3つの領域に分けました。

  • ソフトウェア・サービス
  • インフラ・通信
  • ハードウェア・デバイス

それぞれの成功・失敗例について順番に紹介していきます。

まずはじめに、ソフトウェア・サービス領域から説明を始めます。

成功事例・ラクスルによるペライチのM&A

M&Aの実施時期 2020年10月
M&Aの目的 顧客基盤の拡大
オンライン・オフライン集客の統合
販促領域への事業展開
M&Aの手段 第三者割当増資
既存株主からの株式取得
M&Aの買取価格 4.9億円(第三者割当増資分)

このM&Aの成功要因として、以下の点が挙げられます。

  • 顧客基盤の親和性:両社の顧客層が中小企業を中心としており、互いに補完し合うサービスの提供が可能となった。
  • 明確な戦略的意図:ラクスルの印刷ECサービスとペライチのウェブサイト作成サービスを組み合わせることで、包括的な販促ソリューションを提供できるようになった。
  • 経営の自主性:ペライチの経営陣が引き続き事業運営に関わることで、経営の自主性が保たれ、スムーズな統合が実現した。

 

M&A後は、印刷物とウェブサイトを組み合わせた、集客支援が可能となりました。

両社の強みを活かし、統合されたサービスを顧客に提供できた成功事例です。

 

続いて、ITサービス分野で失敗したM&Aの事例を紹介します。

失敗事例・DMMによるBANKの買収と売却

M&Aの実施時期 2017年10月
M&Aの目的 革新的なサービスを生み出す人材やチームの獲得
成長スピードの加速
「即時買取」市場の確立
M&Aの手段 BANKの全株式取得による完全子会社化
M&Aの買取価格 70億円

 

このM&Aが失敗した主な要因として、以下の点が挙げられます。

  • 事業シナジーの欠如:DMMとBANKの事業領域が異なるため、相乗効果を生み出すことができなかった。
  • 経営方針の不一致:買収後、経営方針や事業戦略について、両社間で十分な合意が得られなかった。
  • スタートアップ特性の理解不足:急成長中のスタートアップを買収する際のリスクや課題が、十分に認識されていなかった可能性がある。
  • 買収価格の妥当性:70億円で買収されたあと、1年後に5億円で売却されたことから、当初の企業価値評価が過大だった可能性が高い。

DMMによるBANKのM&Aは、わずか1年で失敗に終わり、注目を集めた事例です。

IT業界インフラ・通信のM&A事例

続いて、インフラ・通信領域における成功例と失敗例をご紹介します。

成功事例・SHIFTによるホープスのM&A

M&Aの実施時期 2020年9月
M&Aの目的 企業の基幹システム関連のサービス強化
顧客基盤の拡大
企業のデジタル化支援の強化
M&Aの手段 ホープスの全株式取得による完全子会社化
M&Aの買取価格 約30億5800万円

このM&Aが成功した主な要因は、以下の通りです。

  • 市場動向の的確な把握:企業のデジタル化が進む中で、基幹システム市場の成長を見越した判断だった。
  • 相互補完的なサービス:SHIFTの品質保証サービスと、ホープスの基幹システム導入支援の相性が良かった。
  • 明確な成長戦略:SHIFTの中期成長計画に沿った買収であったため、一貫した事業展開が実現した。

M&A後は、基幹システムの導入から保守まで、幅広いサービスを提供ができるようになりました。

両社の強みを活かし、顧客に高い価値を提供することができた成功事例と言えるでしょう。

 

続いて、インフラ・通信分野で失敗したM&A事例を紹介します。

失敗事例・ソフトバンクにおけるスプリントの買収失敗

M&Aの実施時期 2013年7月
M&Aの目的 アメリカの携帯電話市場への進出
世界規模の通信企業への成長
競争力の強化
M&Aの手段 スプリントの株式約72%を現金で取得
残りの株式を新会社の株式に転換
M&Aの買取価格 約216億ドル(約1.8兆円)

このM&Aが失敗した主な要因は、以下の通りです。

  • 市場環境の理解不足:アメリカの携帯電話市場の特性や、競争状況を十分に把握していなかった。
  • 経営改善の難航:買収後もスプリントの業績は低迷し、市場シェアが下落した。
  • 負債の増加:スプリントの巨額の借金が、ソフトバンクの財務を圧迫した。
  • 統合の困難さ:異なる企業文化や経営方針の統合に苦労したと思われる。

 

M&A後、スプリントの立て直しに多くの時間と労力が費やされた結果、ソフトバンク本体も他の事業機会を逃した可能性があります。

この事例は、海外進出の難しさと、大規模M&Aにおけるリスク管理の重要性を示していると言えるでしょう。

 

IT業界ハードウェア・デバイスのM&A事例

最後に、ハードウェア・デバイス領域における成功例と失敗例をご紹介します。

成功事例・ルネサスエレクトロニクスによるIDTのM&A

M&Aの実施時期 2019年3月
M&Aの目的 製品ラインナップの拡大
データ処理関連市場への進出
自動車・産業分野での地位強化
M&Aの手段 現金による全株式取得
M&Aの買取価格 1株あたり49ドル
総額約67億ドル(約7,330億円)

 

このM&Aが成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。

  • 相互補完的な製品:ルネサスの主力製品とIDTのデータ処理製品がうまく組み合わさった。
  • 成長市場への参入:データセンターや通信インフラなど、成長が見込まれる分野に進出できた。
  • 明確な戦略:ルネサスの成長戦略に沿った買収で、一貫した事業展開が可能となった。
  • 財務的メリット:買収直後から収益性の向上が期待できた。

 

M&Aのプラス面としては、IDTの顧客基盤を活用することで新たな企業との取引が可能になった点が挙げられます。また、両社の強みを活かした高度な製品開発が進展したことも大きな成果です。

この事例は、成長市場に参入することで、ルネサスの事業拡大と競争力強化につながった成功例といえます。

 

では失敗した事例をご紹介します。

失敗事例・日立製作所によるIBMのハードディスク事業買収

M&Aの実施時期 2002年12月
M&Aの目的 世界市場での競争力強化
ハードディスク事業の拡大
M&Aの手段 IBMのハードディスク事業部門の買収
新会社「Hitachi Global Storage Technologies」の設立
M&Aの買取価格 約20億5,000万ドル(当時の為替レートで約2,440億円)

 

このM&Aが失敗した主な要因は、以下の通りです。

  • 市場動向の見誤り:買収前後にハードディスクの価格が急激に下落し、予想していた収益を得ることができなくなった。
  • 技術の変化:ハードディスクに代わる新しい記憶装置であるSSDの登場により、市場は急速に変化したが、対応できなかった。
  • 統合の難しさ:日立とIBMの企業文化の違いや、事業統合に時間がかかったため、シナジーを生むには至らなかった。

 

M&A後、日立は毎年約100億円の赤字を出し続け、財務状況は悪化の一途をたどりました。最終的には、2011年、買収したハードディスク事業を、ウェスタン・デジタルに売却せざるを得ない状況に追い込まれました。

この失敗により、当時の日立の経営判断への信頼が低下したと言われています。

 

急速に変化する技術産業におけるM&Aの難しさと、市場動向を正確に見極める重要性を示していると言えるでしょう。

 

M&AでIT企業はどう変わる?成長戦略の4つのポイント

さてここからは、IT業界のM&A成功事例を通じて、成長戦略を実現した4つのポイントをご紹介します。

 

【IT業界のM&Aのポイント】

  1. 新技術の獲得とサービスの統合
  2. 市場動向を見極めた競争力の強化
  3. グローバルな戦略と明確なビジョン
  4. 組織統合による人材不足の解消

順番に紹介していきます。

成長戦略①新技術の獲得とサービスの統合

IT業界におけるM&Aによる成長戦略の1つ目は、新技術の獲得とサービスの統合です。

技術革新が激しいIT業界では、新技術を迅速に取り入れ、既存サービスに統合することで競争力を強化できます。さらに、両社の重複するサービスを統合することで、効率化を図ることも可能です。

M&Aは、外部から革新的な技術を取り込みながらサービスを合理化する手段であり、短期間で技術力を高めることができます。また、顧客に対しては、より価値の高いソリューションを提供し、市場シェアの拡大も期待できます。

自社内での成長を目指すより、M&Aを活用することで、より迅速に事業収益を拡大するチャンスとなるでしょう。

成長戦略②市場動向を見極めた競争力の強化

2つ目のポイントは、市場動向を見極めた競争力の強化です。

急速に変化するIT業界では、技術革新や市場ニーズの変化に対応することが重要です。これにより、企業は競争力を維持し、さらに強化することができます。

 

M&Aを活用して、成長が期待される分野や新技術を持つ企業を早期に取り込むことで、競合に先んじた戦略を展開できます。

たとえば、クラウドコンピューティングやAI分野など、今後の市場成長が見込まれる領域では、技術を持つ企業の買収により競争力を強化した成功事例が多く見られます。

 

さらに、業界のトレンドに適応するだけでなく、将来の市場変化を見据えた買収によって新たな収益源を確保できます。これにより、持続的な成長が可能となります。

市場動向を的確に捉えたM&Aは、企業の競争力を大幅に高め、長期的な成長戦略の基盤を強固にするための重要な手段です。

 

成長戦略③グローバルな戦略と明確なビジョン

3つ目のポイントは、グローバルな戦略と明確なビジョンを持った取り組みです。

急速にグローバル化が進むIT市場では、国内にとどまらず、海外市場への展開も成長に欠かせません。M&Aは、海外市場に迅速に参入するための現実的な手段となります。

 

成功事例では、M&Aを通じて海外拠点を持つ企業を買収し、その地域の市場に直接参入することで成長を加速させたケースがありました。

企業の成長ビジョンを明確にし、M&Aによってそのビジョンに沿った事業展開を行うことで、買収後の統合もスムーズに進むのです。

 

グローバルなネットワークを活用し、各地域のニーズや市場動向に対応したサービスを提供することで、競争力は強化できます。

このように、グローバル市場を視野に入れた明確な戦略とビジョンを持つことは、M&Aの成功において重要なポイントとなります。

 

成長戦略④組織統合による人材不足の解消

IT業界におけるM&Aによる成長戦略の4つ目は、組織をまとめることで人材不足を解消できる点です。

特にIT分野では、高いスキルを持つ人材を確保することが企業の成長に直結します。そのため、優れた人材をどのように確保し、活用できるかが大きな課題です。

M&Aによって、買収先の企業から技術者や専門家を迎え入れることで、自社の技術力やサービス開発の力を強めることができます。

 

また、組織をうまくまとめることで、両社の文化や仕事の進め方をうまく融合させ、人材の離職を防ぎながら、新しいチームを早く作り上げた成功例もあります。

このように、人材不足を解消し、知恵を集めることで、新規事業をスムーズに進めることが可能となります。組織統合を効果的に進めることで、人材の強みを引き出し、M&Aを通じた企業の成長に大きく貢献できるでしょう。

 

IT業界のM&A成功・失敗事例 まとめ

IT業界におけるM&Aの成功事例から学べるポイントは、「組織統合」「市場動向の見極め」「新技術の獲得」「グローバル戦略」の4つです。

これらを適切に活用すれば、企業の競争力を強化し、持続的な成長が可能となります。

 

一方で、失敗事例から学ぶことも非常に重要です。市場動向を誤って判断したり、技術の変化に対応しきれなかったり、買収後の統合がスムーズに進まない場合、M&Aは大きなリスクを伴います。

企業の規模に関わらず、M&Aには慎重な計画と大胆な実行力が必要です。

 

ただし、ここで注意が必要なことは、現在「成功」「失敗」であっても、M&Aを長期的な視点で見ると、「成功」が「失敗」に陥ってしまったり、「失敗」に見えていたものが「成功」につながるということもありえます。
短期的な視点で評価せず、当初の目的を叶えるために試行錯誤しながら、時代の流れのはやく変化が激しい現代においては、柔軟に戦略を変更し、長期的な視点で、成功をなしえる思考が求められます。

つい、M&Aと聞いてネガティブなイメージを持ってしまうかたは、短期的なM&Aの側面だけを見てしまっているかもしれませんので、ご注意ください。

M&Aは、今の時代において成長だけではなく現状維持するためも欠かせない経営戦略のひとつです。

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