「赤字の会社は売却できないのでは?」と、不安に思っていませんか?
たしかに、黒字の会社と比べると、赤字企業の売却は難しいイメージがあるかもしれません。
でも、実際には赤字でも売却が成功するケースは少なくありません。
この記事では、赤字企業のM&Aが可能になる条件や、売却を成功させるためのポイントを詳しく解説します。
たとえば、安定した顧客基盤や専門性の高い技術があれば、買収企業にとって大きな魅力となります。
さらに、「売却」と「廃業」のどちらが適しているか判断するためのヒントもお伝えします。
ぜひ最後までお読みください。
赤字会社でも売却可能!赤字の会社を買う4つのメリット
まずは、買収する側の視点について見ていきましょう。
赤字会社を買収することで得られる4つのメリットをご紹介します。
- 繰越欠損金の活用による節税効果のメリット
- 黒字企業よりも安価で買収し、事業拡大できるメリット
- 既存事業とのシナジー効果が期待できるメリット
- 優秀な人材を獲得できるメリット
繰越欠損金の活用による節税効果のメリット
赤字会社を買収するメリットの1つ目は、「繰越欠損金を活用した節税効果」です。
これは、買収した会社が過去に出した赤字(繰越欠損金)を利用して、買収後の利益にかかる税金を減らせる仕組みです。
たとえば、数年間赤字を抱えていたA社をB社が買収した場合、B社はA社の繰越欠損金を活用することで、税金の負担を抑えることができます。
その結果、浮いたお金を新しい事業や設備投資に使うことができ、早い段階で収益を改善することが期待できます。
このように、節税効果を目的に赤字企業を買収する会社も多く、赤字企業が持つ財務上の価値として注目されることがあります。
黒字企業よりも安価で買収し、事業拡大できるメリット
2つ目のメリットは、「黒字企業よりも安価に買収でき、事業拡大につなげられる」点です。
赤字企業は一般的に黒字企業に比べて買収価格が低いため、コストを抑えつつ事業規模を拡大したい企業にとって魅力的です。
たとえば、製造業のA社が赤字を抱え、事業の継続が難しい状況にあるとします。
B社がA社を買収すれば、少ない投資でA社の生産ラインやノウハウを自社に取り込み、生産能力を効率よく強化できます。
また、買収費用が抑えられる分、その資金を新たな成長戦略や事業に回せるため、企業全体の成長をスピードアップさせることが可能です。
このように、赤字企業の買収は低コストで事業拡大を進める手段のひとつといえます。
既存事業とのシナジー効果が期待できるメリット
3つ目のメリットは、「既存事業とのシナジー効果が期待できる」点です。
これは、赤字企業を買収することで自社の事業にプラスの相乗効果をもたらすことを意味します。
たとえば、製品開発に強みを持つ赤字企業A社を、広い販売ネットワークを持つB社が買収したとします。
この場合、B社はA社の技術力を活用することで、新しい商品を効率よく市場に出すことができます。
その結果、売上を拡大させることが期待できるでしょう。
また、A社がすでに持つ取引先やブランド力が、B社の既存事業の信頼性を高めることで、さらなる成長につながる可能性もあります。
このように、赤字企業が持つ技術や販路が買収企業の事業と結びつくことで、単独では得られなかった新たな成長機会を生み出すケースがあるのです。
優秀な人材を獲得できるメリット
4つ目のメリットは、「優秀な人材を獲得できる」点です。
赤字企業であっても、特定の分野に優れた技術や経験を持つ人材が、在籍していることは少なくありません。
たとえば、製造業のB社が、赤字企業A社を買収したとします。
A社に所属する優れたエンジニアや管理職がB社に加わることで、B社は技術力の強化や新しいプロジェクトの推進が可能になり、事業の質が向上します。
これにより、さらに革新的な製品やサービスを生み出せる可能性が高まります。
また、赤字の原因が経営面にある場合でも、現場の従業員が高いスキルを持っていれば、適切な環境下でその能力を発揮し、企業全体の成長に貢献する「人財」として大きな価値をもたらします。
赤字でも買収企業を惹きつける条件
ここからは、赤字企業であっても買収企業にとって、魅力的に映る条件についてご紹介していきます。
【他社にない強み】独自の技術やノウハウ、特許の保有
まず挙げる条件は、他社にはない強み、つまり独自の技術やノウハウ、特許を持っていることです。
赤字企業であっても、特定分野で他社が持たない技術があれば、それは買収企業にとって大きな魅力になります。
たとえば、製薬業界のA社が赤字であっても、特定の病気に対する新しい治療法の特許を持っているとします。
この特許が将来的に有望とされれば、他の製薬企業B社はA社を買収することで、その技術を活かして新商品の開発や市場展開ができ、競争力を高めるチャンスを得られるのです。
このように、赤字企業でも他社にない技術や知識を保有していれば、買収側にとって事業拡大や成長の足がかりとなる可能性があります。
【無形資産の充実】優良な顧客基盤や取引先との関係性
次の条件は、無形資産が充実していること、つまり優良な顧客基盤や取引先との信頼関係を持っている点です。
赤字企業でも、長年培われた顧客や取引先との関係は、買収企業にとって大きな価値があります。
たとえば、B社が赤字の商社A社を買収する場合を考えてみましょう。
A社は財務面では苦戦していますが、業界の大手メーカーとの強い取引関係や、安定した優良顧客層を持っていました。
B社がこのネットワークを引き継ぐことで、新規営業に多くの時間をかけず、すぐに既存の取引先と取引を始めることができ、早期に収益改善が期待できます。
このような無形の資産は、買収後のビジネス展開をスムーズに進める基盤となるため、赤字であっても「信頼のネットワーク」を持つ企業は買収側にとって大きな魅力となるのです。
【成長の可能性】将来的な収益改善が見込める事業展開
さらに、成長の可能性、つまり将来的に収益改善が見込める事業展開があることも、買収企業にとって魅力的な条件の一つです。
赤字企業でも、今後の成長が期待できる事業や計画があれば、買収側には大きなメリットとなります。
たとえば、赤字の飲食業A社が地元で人気のある独自メニューを開発していたとします。
現在はコストがかさみ赤字ですが、このメニューが注目を集め、将来的に他地域への展開や店舗拡大の可能性が見込まれるとします。
B社がA社を買収することで、資金やノウハウを投入し事業を拡大すれば、利益を上げられる見込みが高まります。
このように、成長が期待できる事業を持つ赤字企業は、短期的な赤字であっても買収側にとっては長期的な収益拡大のチャンスとなり、投資を検討する動機になるのです。
赤字企業の価値は?M&Aにおける売却相場を解説
赤字企業の売却相場は、一概に示すのは難しいものです。
赤字企業は財務状況や業種によって評価が大きく異なるため、売却価格も状況によって異なります。
ただし、一般的に赤字企業の売却相場は、黒字企業よりも低くなる傾向があります。
たとえば、製造業の赤字企業A社が売却を検討する場合、黒字のB社と比べると価値は低めに評価されることが多いです。
これは、買収後に経営立て直しのコストやリスクを、買い手が負う必要があるためです。
しかし、赤字でも独自の技術や強いブランド力を持っていれば、買い手にとっては魅力的な条件となり、一定の売却価格が期待できます。
このように、赤字企業の価値は多面的に評価されるため、黒字企業より相場が低い一方で、売却が実現するケースも多くあります。
赤字会社の選択肢:売却と廃業のどっちが得?判断ポイントを紹介
ここからは、赤字企業がとるべき選択肢として、「売却」と「廃業」のどちらにどんなメリットやデメリットがあるのか、考えてみましょう。
■赤字企業の選択肢:売却と廃業のメリット・デメリット
メリット | デメリット | |
売却 | ・事業や従業員の継続が可能 ・売却代金を得て次の挑戦ができる |
・買い手が見つからないリスクがある |
廃業 | ・経営リスクや赤字の拡大を防げる ・債務から解放される |
・清算費用や従業員解雇の負担が大きい ・精神的負担も伴う |
売却する場合、会社の資産や顧客基盤が買い手に引き継がれるため、事業や従業員がそのまま継続できる点が大きなメリットです。
また、売却代金が得られるため、経営者にとっては次の挑戦や生活のための資金源にもなります。
ただし、買い手が見つからないリスクもあるため、その点を考慮する必要があります。
一方、廃業する場合は、経営リスクや赤字の拡大を防ぐことができます。
たとえば、製造業のA社が廃業を選ぶことで、赤字拡大を止め、債務から解放されるケースがこれに当てはまります。
ただし、廃業には清算費用や従業員解雇に伴う手続きが必要で、経営者にとって精神的な負担が大きくなることもあります。
このように、売却は「次のステップに進む手段」として、廃業は「リスクを避ける選択」として、それぞれの状況に合わせた慎重な判断が求められます。
赤字会社の売却成功事例
ここで、赤字会社の売却事例として、楽天によるイーバンク銀行の買収を紹介します。
M&Aの実施時期 | 2009年2月 |
M&Aの目的 | ・楽天経済圏の拡大 ・ネット専業銀行としての顧客基盤強化 ・決済サービスの向上 ・金融事業への本格参入 |
M&Aの手段 | ・株式譲渡(優先株式を普通株式に転換し、連結子会社化) ・株式公開買付け(TOB)による完全子会社化 |
M&Aの買取価格 | ・優先株式取得額:199億8000万円 ・TOBによる買付価格:1株あたり3万3000円、総額228億1200万円 |
このM&Aが成功した主な要因として、以下の点が挙げられます。
- 経営理念の共通点: 楽天とイーバンク銀行は、インターネットを活用したサービス提供という共通のビジョンを持っており、スムーズな統合が可能だった。
- 顧客基盤の拡大: 楽天はイーバンク銀行の既存顧客基盤を活用し、楽天市場など他のサービスとの連携を強化した。
- 相互補完的な強みの活用: 楽天のECプラットフォームとイーバンク銀行の決済技術を組み合わせることで、新しいサービス開発が可能となった。
M&A後の効果
- ブランド強化: イーバンク銀行は楽天銀行へと名称変更され、ブランド力が高まった
- サービス拡充: 楽天グループ内での金融サービスが多様化し、ユーザーにとって利便性が向上した。
- 市場シェア拡大: 楽天銀行として、日本国内でのネット銀行市場におけるシェアが拡大した。
イーバンク銀行は赤字企業でしたが、楽天によるM&Aにより、楽天は金融業界での競争力を大きく強化することができました。
イーバンク銀行の買収は、赤字企業であっても戦略的な価値があれば、成功につながることを示す好例といえます。
会社を売却成功に導くポイント
それでは、赤字会社の売却を成功に導くための3つのポイントについてご紹介します。
- 買収側にとってのメリットを具体的に提示する
- 赤字の要因を分析し、改善策と事業計画を作る
- 専門家に相談し、売却戦略のサポートを受ける
買収側にとってのメリットを具体的に提示する
1つ目の成功ポイントは、「買収側にとってのメリットを具体的に提示する」ことです。
買収企業にとって魅力的な価値や利益を明確に示すことで、交渉がスムーズに進み、売却の成功率が高まります。
たとえば、製造業のA社が特許を持つ新しい技術を開発していた場合を考えてみましょう。
A社が売却の際に、この特許がB社の製品ラインに活用できると説明すれば、B社はその技術によって自社製品の競争力を強化できると考え、A社を買収するメリットがあると感じるでしょう。
このように、買収側にとっての利点を具体的に示すことが、売却決定を後押しします。特に、得られる利益や事業の強化ポイントを明確に提示することが、売却成功の鍵となります。
赤字の要因を分析し、改善策と事業計画を作る
次のポイントは、「赤字の要因を分析し、改善策と事業計画を示す」ことです。
買収企業が安心して取引できるよう、赤字の原因を明確にし、具体的な改善策や今後の事業計画を提示することが重要です。
たとえば、飲食業のA社が人手不足でサービスの質が低下し、赤字に陥っていた場合を考えてみましょう。
この場合、A社は「業務の一部をデジタル化し、スタッフの負担を減らす」といった改善策を打ち出し、さらに「デジタル化でサービスの質を向上させ、収益を増やす」という具体的な事業計画を作成します。
このように、買収企業にA社の将来性や改善の見込みを示すことで、買収に前向きになってもらいやすくなります。売却を成功させるには、赤字要因をしっかり把握し、具体的でわかりやすい改善案を示すことが欠かせません。
専門家に相談し、売却戦略のサポートを受ける
最後のポイントは、「専門家に相談し、売却戦略のサポートを受ける」ことです。
売却には法務や財務、交渉の知識が必要で、これらを一人で対応するのは大変です。
M&Aの専門家に相談することで、売却戦略の立案や適切な買い手の選定、条件交渉のサポートを受けることができます。
専門家が関わることで、会社の強みを引き出した売却戦略が練られ、適切な買い手候補が選定されると同時に、交渉の際も条件調整がスムーズに進みます。
その結果、希望に沿った形での取引が実現しやすくなるでしょう。
赤字会社売却のメリット まとめ
赤字会社でも、売却を成功させることは十分に可能です。
本記事でご紹介した赤字会社の売却のコツや、売却と廃業それぞれのメリット・デメリットを参考にすることで、最適な選択肢を見つけることができるでしょう。
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インターネットの黎明期から20年間マーケターとして活躍
ウマ娘のサイバーエージェント出身
世界的No.1コンサルティング会社、大手保険会社、大手損保会社、大手人材系上場企業など多様な業種のクライアントに対してマーケティングナレッジを活用して課題解決に貢献する
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